「インド万華鏡」の旅へ

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ナルマダ河の聖地マヘシュワール / アヒリャーバーイ王妃の記憶

今回紹介するのは、マヘシュワール(Maheshwar)。オンカレシュワルの下流にあるナルマダ河に面したヒンドゥ聖地だ。  

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ガートから見るナルマダ河の夜明け 

マヘシュワールは、古くはマハバーラタの時代から知られた地政学的要衝で、現在残るガートやパレス、そして寺院群は、18世紀にこの地を支配した、ホルカー家のアヒリャーバーイ王妃が残したものだ。 

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アヒリャーバーイ王妃のパレスと、隣接するヒンドゥ寺院

ホルカー家は、近郊のインドールを拠点としたマルワー地方の藩王家で、その独特なホルカー・スタイルの彫刻でも有名だ。 

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寺院内陣からナルマダ河を望む 。イスラム建築の影響を受けた非常にスタイリッシュな様式美

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反対にガートから見上げるとこのようになる

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寺院正門。靴やチャッパルを脱ぐように、と書いてあって、インド人は素直にそれに従う

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微妙に左右で違うがシンメトリカルな象の彫刻。背中に登るための梯子まで描いてある

アヒリャーバーイは男勝りの女傑で、しばしば先頭に立って軍陣を指揮したという。 西洋におけるジャンヌ・ダルクのような女傑伝説はインドでは結構多い。

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パレスを見上げるガートを行く巡礼の家族。ここでも聖杖ダンダは欠かせない 

このパレスは王妃が居城として造ったもので、最上階は今ではゲストハウスになっているというが、小ぶりながらも堂々とした雄姿を見せている。

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パレス最上階は展望レストランとゲストハウスになっている。さぞかし眺めが良いのだろう

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メインガートでプージャをする巡礼たち 

パレスの眼下にはメインガートが広がり、日々多くの巡礼たちで賑わっている。その光景は、バラナシなどのコマーシャライズされたものとは違う、いにしえからの素朴な風情を湛えている。

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メインガートには多くの寺院や祠堂が立ち並んでいる 

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朝日を受けて洗濯や沐浴、プージャの準備に余念がない

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おそらく個人が寄進したと思われる小さなシヴァ・リンガ。ナンディ牛が見守っている

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まだ薄暗い明け方、働き者の女たちは洗濯にいそしむ

メインガートを一歩離れると、途端に人気は少なくなる。やがて火葬場のガートを過ぎると、ほとんど手付かずの河原が広がり、茫漠とした河の水だけが滔々と流れ続けている。

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人気の無いガートを洗濯女が行く 

そんな寂れた河原にも所々内陸の集落からの道がつながり、その周囲には小さなガートと、それを守るように立つ祠堂が必ずある。

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ガート沿いに立つ祠堂で祈る女性 

どんなに小さな祠堂でも、それは日々の生活の中で絶対に欠かせない大切な祈りの場になっており、そんな祠堂やガートをつなぐようにして、川沿いには延々と踏み分け道の歩道が続いている。

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茫漠たる水の広がりと点在する祠堂

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ガートは、一応場所や時間で大雑把に男性用と女性用に分けられている様だ。これは男性タイム

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川船は観光用だけではなく日常の足としても活躍している。これは対岸への渡船

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この水の圧倒的な存在感は、どんなに写真を並べても伝えきれない

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と言いつつも、可能な限り伝えたいので並べてしまう

上の写真には川沿いの遊歩道(単なる踏み分け道)が写っているが、もしマヘッシュワールを訪ねたならば、是非のんびりと散策してみてほしい《日射病には注意!》。

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高台の寺院から対岸を見渡す。船の大きさから川幅の広さがイメージできるだろうか

祈りと沐浴そして洗濯。そこに流れるゆったりとした時間は、太古より変わらずに流れ続ける聖ナルマダ河の水の流れにわが身を重ねて生きる、インドの人々の心象風景そのものかも知れない。

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朝焼けの中、沐浴する 

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こちらは夕暮れ時。ガートもない自然の岩の岸で沐浴している

現在のマヘシュワールはローカルバスが着くバススタンドからガートに向かって南へと伸びる一本道の周囲に発達した小さな町で、一歩町域を外れると、のどかな村の風景が広がっている。 

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周辺の村には広大なバナナ園が広がっていて、これは出荷風景。インド人には男女ともに「作業服」という概念はあまりないようだ。

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村の祠堂を守るプージャリ。背後には要塞化された寺院が見える

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要塞内部の庭園中央に立つヒンドゥ寺院。砲弾型のデザインはインド寺院建築の祖型。こんなアシュラムでヨーガ三昧の生活とかできたら幸せだ

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村の女の子たち。左の子は水汲みの瓶を頭に乗せ、おやつのサトウキビをかじっている

インドではよくある事だが、村の子供たちはとても人懐こく、カメラを持った私はたちまち取り囲まれてしまった。 

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一度写真を撮ると、目ざとい子供らがたちまち群がって来る

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インドでは珍しい木造の家も残っている。酷暑期への対応が第一に考えられ全体に窓は小さい

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これもかなりの部分が伝統的な木造建築になっている

ナルマダ河のガートを中心としたマヘッシュワールは、有名観光地などとは対照的な、素朴なインドの原郷とも言える 聖地だ。

これから紹介する予定のオンカレシュワルやマンドゥをはじめ、マディヤ・プラデシュ州にはそのような場所が多く存在している。観光メインルートから外れたインドらしいインドを味わいたい人は、是非訪ねてみてほしい。

youtu.beより、次回に紹介する予定のオンカレシュワルとマヘッシュワールのPV

さすが観光局の公式だけあって美しい映像だ

(本記事はマヘシュワール・王妃アヒリャバーイの記憶 1・2 - Yahoo!ブログを大幅に加筆修正し移転したものです)

 

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