「インド万華鏡」の旅へ

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オームカレシュワルの巡礼路 【後編】尾根道を越えて遺跡エリアへ

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サンガムの河原。水は澄み、自然の岩場が日本人には心地よい

前回、オンカレシュワル寺院からサンガムの合流点までの道行きを紹介した。

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聖河合流点サンガムで沐浴する

サンガムで身を清めた巡礼たちは、ここで折り返して島の尾根筋へと登っていく。

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沐浴で濡れたサリーを風に当て陽にさらして乾かす。サリーは極めて薄いので5分もあれば着られるくらいには乾くだろう

路の両脇には、大小の寺院や祀堂が点在し、巡礼たちはそのひとつひとつで敬虔な祈りを捧げる。

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シヴァ・リンガムに祈る。男たちの白衣は巡礼の正装だ

やがて尾根筋に至った巡礼たちは、まっすぐに東の果てを目指す。

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こういう路地の雰囲気が、私はたまらなく好きだ。どこか地中海的な白亜の光と影

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点在する土産物屋でお買い物。別に他で買っても大して変わらない品揃えなんだけど、やっぱり買いたい!

平らな尾根道の両脇には土産物屋や祠堂が点在し、巡礼たちは時に祈り時に買い物に励みつつ、進んでいく。

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商品が陽よけのすだれを兼ねている?

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聖杖ダンダを手に持つ巡礼家族。真ん中のお父さんはプラスチックの義足で歩き通していた

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高台のチャイ屋で休むサドゥ

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ガンジャはサドゥの友 

サドゥがチュラムで一服を楽しむ見晴らしの良いチャイ屋を過ぎ、

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ヒマラヤのある北を見つめる巨大なシヴァ神像 

太陽を背にしたシヴァ神を過ぎると、 

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古代世界へのゲート。トラナと言うべきかドワーラと言うべきか

やがて巡礼の路は、古代遺跡のエリアへと入っていく。

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このような遺物が至る所に点在している。植物の緑と鉱物の遺跡のコントラスト

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悪魔と戦うドゥルガー女神

遺跡エリアはデヴィ(女神)たちの王国だ。 

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11世紀に建てられたガウリ・ソムナート寺院 

三階あるフロアの全てにシヴァ・リンガムが祭られているソムナート寺院を過ぎ、

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赤砂岩のシッダナート寺院と巡礼家族

象のレリーフが美しいシッダナート寺院に目を見張ると、やがて路は谷を降り、再び尾根に上って、 ダムを遠望する島の東の端に至る。

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東の果てに立つ一本の樹。私はこの樹が視野に入った瞬間、ビリビリと感じるものがあった

そこには、美しく黄葉した一本の樹が独特の存在感を放ちながら立ち、 

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門柱だけが残った寺院の跡。私はムードで古代と書いているが、年代的には中世期が正しいだろう

その根元には、ほとんどの手が折れて失われてしまった、しかしそれでもなお凛とした美しさと威厳を湛えた、一体のドゥルガー女神像が置かれている。 

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朱に塗られたドゥルガー女神。背後には遠くダムが見える。

その胸には、インド彫刻の女神像に特徴的な丸いボールを二つ割りにしたようなぷっくらとした乳房が並び、よく見ると背後に立つ樹の幹にも、たらちねの乳房が並んでいる。

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垂乳根(たらちね)の御神木 

ドゥルガー女神像の乳房は、驚いた事に巡礼路の村で出会った若く美しい母親の乳房と瓜二つの形をしていた。

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腕の細さと胸の豊かさのコントラストが印象的なマタジー 

このボールのように丸い乳房はインド的母性の象徴であり、同時に大地の恵み、豊穣の地母神を象徴している。 

現代のヒンドゥ教は、シヴァ・ルドラとヴィシュヌ・クリシュナの二大神に支配されているように見える。けれども、本当に人々の心をつかんでいるのは、デヴィと呼ばれる女神たちなのだ。

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水牛の悪魔を滅ぼすマヒシャスラ・マルディニ(ドゥルガー

人々のその思いは、遺跡エリアの主役であるドゥルガー女神たちの豊かな胸乳の上に、くっきりと刻みこまれている。 

マンダタ島の東の端、ダムを遠望する崖の上に女神はいる

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遺跡とダム、古代と現代が交錯する 

巡礼はここでようやく折り返し、ダムを遠望しながら南へと崖道を下りる。 

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南岸に戻った巡礼の路は、川沿いを一直線にオームカレシュワル寺院を目指す

乾燥した台地は一変し、水の気配が横溢する路を、巡礼たちは黙々と歩き続ける。その表情は、近づいたゴールを目の前にして、自ずからどこかほころんでいる。 

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餌をねだるサルとじゃれ合いつつ進む。頭上運搬は、インド女性にとって最も自然で楽な方法だ 

沿道でエサをねだるサルたちと戯れつつ、巡礼たちは川の光を存分に浴びて進む。 

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リバー・トリップを終えた巡礼たち。単純な対岸への渡しからマンダタ島一周まで、様々なコースがある

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オムカレシュワル寺院の手前にかかるつり橋。左手がダムのある上流・東 

やがて一本の瀟洒なつり橋を過ぎると、オンカレシュワル寺院はもう、すぐそこだ。 

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吊り橋とダムの間の河原には火葬のガートがある。つまり、よく考えるとサンガムの沐浴場では遺灰の混ざった水を浴びている事になる。まぁこの水量だ、気にせずにおこう

全ての巡礼を終えた人々は、オンカレシュワル寺院のあるマンダタ島から橋を渡って対岸へ戻り、バザールのはずれにあるバススタンドからそれぞれの日常へと戻っていく。 

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バザールのアムルード(グァバ)売り 

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黄昏時のオンカレシュワル寺院 

一方で、次々とやって来る新たなる巡礼たちによって、黄昏時のプージャは今日も賑わいを見せるのだった。

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オンカレシュワル寺院内部は写真撮影禁止のため、これは他のシヴァ寺院の様子

最後に二つYoutubeのビデオを貼っておこう。どちらも少々古い映像だが、逆に経済発展によって変化する以前の本来のオンカレシュワルの雰囲気をよく伝えている。


OMKARESHWARより。画質は悪いが雰囲気を良くとらえている


YATRA a visit to Omkareshwarより。圧倒的に美しい映像(ヒンディ語

Omkareshwarの日本語表記はオームカレシュワル、オムカレシュワル、オンカレシュワルなどのブレがありますが、検索率向上のため併記しています。

私の個人的な体験で言えば、最も現地発音に近いのはオンカレシュワルなのですが、ネット上ではオームカレシュワルが幅を利かせていたのでタイトルにはそれを使いました。ちょっぴり悔しいが多勢に無勢(笑)

(本投稿はインド百景 - Yahoo!ブログの記事を増補・修正の上移転したものです) 

 

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